科学技術イノベーションの成果を先端医療に応用していくためには、それが安全で有効であることを担保する「レギュレーションのイノベーション」を同時に起こしていく必要があります。そのようなイノベーションとレギュレーションの相互作用を萌芽的技術発生の初期段階から進めていくための「社会システム: システム・オブ・システムズ(Society 5.0)」を考えるシンポジウムです。
第2回となる今年は、まずセッション1にて、「エビデンス」と「プロセス」の関係、特にレギュレーションのための技術予測で観測されるエビデンスが規制整備のタイミングをどこまで示唆するか、またエビデンスありきでスタートする場合にルール整備の透明性を高めてかつ効率よくルールを策定していくためのプロセスはどうあるべきかに焦点を当て、RISTEXプロジェクトにおける研究成果(「ルール組成のためのルールの整備」=「プロセス定義」の必要性に関する論点整理)をベースに問題提起を行い、様々な立場・経験を経た専門家からご意見をお伺いします。
特に、バイオマーカー、動物モデル、臨床効果の評価(Clinial outcome assesment)の3つの分野では、これらを用いた新しい評価技術を医薬品や医療機器の薬事申請データに使っていくための、新たな認証システムの構築が欧米で始まっており、Drug Development Tool Qualification Program(DDT), Medical Device Development Tool Qualification Program(MDDT)に対する申請が、米国ではバイオマーカーだけで80件程度も行われ、新たなバイオマーカーの評価手段としての認知が進められるなど、医療評価技術におけるルール・オブ・ルールのシステム設定と運用が進展してきており、同様の認証システムを持たない日本はどうするのかが問われております。またDDT、MDDTには含まれない再生医療における医療評価技術の評価と認証は、日本にとっても重要な課題です。人工知能やデータサイエンスを含む情報技術、材料技術、電子技術など先端医療に利用できる技術の保有者は多様化しており、新たな評価方法を開発したイノベーターがその評価手段をレギュレーションに使えるように、自らが動ける手段が用意されているのと、いないのでは評価技術の普及の程度は全く異なると考えられます。ルール・オブ・ルールの整備は、プロセスの透明性と効率性を担保しながら、イノベーターとレギュレーターの関係を次の段階に引き上げる効果があり、ルール作成におけるイノベーターの積極的な関与が期待できるのです。
セッション2では、そのプロセスを担う組織のあり方についてRISTEXプロジェクトでの成果をもとに、特に日本発の技術に対する日本発のルールを国際的に普及させていくための仕組みについて、技術標準と薬事規制の両面からその活動を支える組織や活動のあり方について、RISTEXプロジェクトで「境界組織」と呼んでいる媒介型の組織を実際に運営している方に、国内ルールと国際ルールの整備を連動させる部分にフォーカスをあててご議論頂きます。
最後に、イノベーションとレギュレーションの相互作用のあり方について総合的なディスカッションを進めます。「レギュレーションを制する者はイノベーションを制する」の例えもあるように、イノベーションの議論は、レギュレーションの議論と表裏一体であり、効率的かつ透明性の高いレギュレーションを組成する社会システム構築のための論点整理を試みます。
時間 | 演題タイトル | 座長/講演者 | 所属 |
13:00-13:15 | 開会のご挨拶 | 大崎 博之 | 東京大学大学院 新領域創成科学研究科長 |
坂巻 弘之 | 神奈川県立保健福祉大学イノベーション政策研究センター長 | ||
セッション1 | レギュラトリーサイエンスの深化とさらなる実装のために |
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13:15-13:25 | 基調講演1:プロジェクト報告と問題提起 「技術予測で何がかわる、何ができる?研究開発と薬事規制の架橋」 | 加納 信吾 | 東大新領域 メディカル情報生命専攻 バイオイノベーション政策分野 准教授 |
13:25-13:35 | 基調講演2:プロジェクト報告と問題提起 「日本版ルール・オブ・ルール構築に向けての課題」 | 佐藤 智晶 | 青山学院大学法学部 准教授, 東京大学公共政策大学院特任准教授, 神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科客員准教授 |
13:35-13:50 | Keynote Lecture: Drivers of innovation/regulatory Policy improvement in the US |
Mark McClellan | Professor, Duke margolls Centor for Health Policy, Duke University, 元FDA長官 |
13:50-14:50 | パネル議論@「何がレギュラトリーサイエンスを深化させるのか?ビジョンとツール」 | モデレーター 佐藤 智晶 | |
13:50-14:00 | パネリスト : (各パネリストは10分の個別トーク後にディスカッションに参加。パネルディスカッションは、全員で14:20-14:50) |
近藤 達也 | 一般社団法人Medical Excellence Japan (MEJ) 理事長, 神奈川県立保健福祉大学 顧問, 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)名誉理事長 |
14:00-14:10 | 城山 英明 | 東京大学公共政策大学院教授、法学政治学研究科教授、未来ビジョン研究センター副センター長 | |
14:10-14:20 | 三村 まり子 | 西村あさひ法律事務所 オブカウンセル | |
14:50-15:00 | 休憩 | ||
セッション2 | 新技術の利用ルールの国際展開における境界組織の役割 | ||
15:00-15:10 | 基調講演3:プロジェクト報告と問題提起 「新技術の利用ルールを国際展開するには? −ケースに学ぶー」 | 関野 祐子 | 東京大学大学院薬学系研究科 特任教授 |
15:10-14:50 | パネル議論A「ルールの国際化に向けた日本からの情報発信」 | モデレーター関野 祐子 | |
15:10-15:25 | HESIの活動と機能 技術委員会の事例から | Syril Pettit | Executive Director, HESI |
15:25-15:35 | 再生・細胞医療の安全性評価に関する国際的コンセンサスの形成に向けて | 佐藤 陽治 | 国立医薬品食品衛生研究所 再生・細胞医療製品部 部長 |
15:35-15:45 | 境界組織としてのFIRMの国際連携活動 | 柳田 豊 | 再生医療イノベーションフォーラム 標準化部会副部会長 |
15:45-15:55 | ヘルスケアのための新しいシンクタンク機能 | 黒河 昭雄 | 神奈川県立保健福祉大学イノベーション政策研究センター 研究主幹 |
15:55-16:30 |
パネルディスカッション | ||
16:30-16:40 | 休憩 | ||
セッション3 | イノベーションとレギュレーションの共進化は本当に可能か? | ||
16:40-16:45 | Innovation first, regulation afterからCo-evolutionへのシフトに向けた論点整理 | 加納 信吾 | |
16:45-17:20 | イノベーターのレギュレーション・マネジメントに向けて | モデレータ 加納 信吾 |
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パネリスト | 佐藤 智晶 | 青山学院大学法学部 准教授 | |
菊地 眞 | 公益財団法人医療機器センター理事長 | ||
Mark Mclellan | Professor, Duke margolls Centor for Health Policy, Duke University | ||
近藤 達也 | Medical Excellence Japan(MEJ)理事長 | ||
Syrill Pettit | Executive Director, HESI | ||
17:20-17:30 | 閉会のご挨拶 | 山梨 裕司 | 東京大学 医科学研究所長 |
17:30-19:30 | レセプション | 於:近代医科学記念館(医科研内) |
事務局: sfair[at]bioip-lab.org
東京大学大学院 新領域創成科学研究科
メディカル情報生命専攻
医療イノベーションコース
バイオイノベーション政策分野内